連載・特集

みすず野2022.4.26

 事故があった知床とは少し離れているけれど、同じ道東の厚岸で桜まつりの始まる日が5月14日と見れば、オホーツクの海の冷たさが思われる。悲報に言葉を失う。懸命の捜索が発生から丸2日たった本稿執筆時も続けられている◆手付かずの自然が眺められるとあって、観光船は人気がある。当地にも「知床旅情」の歌声に憧れ、乗船の思い出を持つ方が大勢おられよう。遭難原因の究明は先の話だが、現時点で出航に至る判断の是非が報じられる。コロナ禍で受けた打撃を取り戻すため一日でも早く、一便でも多くと焦りみたいなものがなかったか◆大型連休は人が動く。観光に携わる人たちの期待と意気込みは大きい。万が一にも危険箇所がないか。点検と判断基準の確認をいま一度お願いしたい。今は行方が分からない人の一刻も早い救助をひたすら祈るのみ◆冒頭に厚岸を挙げたのは、たまたま目の前の十数冊の本の中に開高健のエッセー集を見つけたから。焼きたてのカキとコップ酒を交互にやり〈うっとりとなる〉一方で、倉庫の外では吹雪が〈ひょうひょうごうごうと〉音を立てる。4月だ。やはり無理をしたのではないか。

連載・特集

もっと見る