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旧島々駅復元駅舎の解体始まる 県内外のファン落胆

既に西半分が解体された旧島々駅復元駅舎。周囲には県内外のファンが見納めに訪れていた

 筑摩鉄道島々線(現アルピコ交通上高地線)の終着駅の姿を今に伝えた、松本市波田の旧島々駅復元駅舎で今月、解体工事が始まった。上高地への玄関口として大正11(1922)年に開業した島々駅を廃止後の平成3(1991)年に当時の旧波田町が現在地に復元し、歴史的象徴と建築的意匠の両面から親しまれたが、老朽化を理由に所有する市が保存を断念した。優れた場所や景観の継承の難しさに県内外のファンが落胆している。

 島々駅は上高地線の現在の終着駅・新島々よりも1㌔余り西に位置していた。『波田町誌』などによると昭和初期には島々から大正池までバス運行が延び、上高地方面を目指す来訪者らの拠点として定着。登山の大衆化を後押しした。しかし昭和58年の台風被害による新島々―島々間の寸断を機に、60年に島々駅は廃止された。
 一方、本場アルプスを思わせたヨーロッパ風駅舎をしのび、旧波田町が新島々駅の北向かいに木造2階建て延べ約130平方㍍の"旧島々駅舎"を復元したのが31年前。同町と市の合併後も平成27年まで、観光案内所として使用された。老朽化を理由に市が供用を廃止した後は、市民有志が一般競争入札を前提に民間活用を模索したが入札は行われず、活用の道が閉ざされた。解体後は一帯の敷地と同様、市のパーク&ライドとして駐車場利用される見通し。
 既に半分まで解体された13日、現場には別れを惜しむ人が入れ替わり立ち替わり訪れていた。鉄道好きの長男(7)と足を運んだ市内の女性(42)は「ついにこの日がきちゃった」と目に焼き付けた。撮影に訪れた神戸市の会社員・井田龍介さん(29)は「建築や鉄道が好きな人間には全国的に知られていた場所。本当に惜しまれる」と肩を落とした。