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考える力育む「自習室」 豊科の鈴木さん無償指導

中学生に数学を教える鈴木さん。初めは「分からない」と頭を抱えていた生徒も、やがて問題を解くのに夢中になっていた

 子供たちの「考える力」を育てたい―。安曇野市豊科高家の鈴木健司さん(63)は、地域の子供たちにボランティアで勉強を教えている。成績を上げるためだけの知識の詰め込みではなく、答えを導き出す楽しさと大切さを味わってほしいと開いた「自習室」は、子供たちはもとより保護者らの信頼も厚い。

 自習室は毎週土、日曜日と長期休みに開いている。今年の冬休みは午前は自宅近くの飯田公民館で、午後は豊科ささえあいセンター・にじで8日間の日程で開いており、小中学生10人以上が通う。それぞれが学びたい教科を持ち込み、分からないところを教わるという形式だが、鈴木さんは「答えを導く力が身に付く」と特に数学を重視している。一昨年の夏に通い始めた滝沢葵君(14)=豊科南中2年=は「算数・数学は小学生の頃から苦手だったのに、今では好きになった。数学はほかの教科でも役立つ」と笑顔を見せる。
 鈴木さんは福島県川俣町の出身で、長野県に移住して40年以上になる。松本市内の製造業で半導体開発に携わってきた。平成23(2011)年の東日本大震災と東京電力福島第1原子力発電所事故で大きな被害を受けた故郷のため、復興支援に取り組んできた。住む家を失い、勉強する場所も確保できない子供たちに出会って、定年後は帰郷して教育支援に携わるつもりだった。
 しかし定年直前、故郷に1人残っていた父親が亡くなり、一緒に活動に取り組む予定だった親友も急逝した。「それならば今、置かれている場所で、自分ができることを始めてみよう」と令和元年の秋、地元での自習室開設を決めた。
 鈴木さんは「これからは問題解決力が必要とされる時代になる。考える力を持った子供たちを、たくさん育てていければ」と奮闘している。

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