連載・特集

2022.1.21 みすず野

 新美南吉の創作童話に「でんでんむしのかなしみ」という作品がある。1匹のでんでん虫が、自分が背負う殻の中には悲しみが詰まっていて、もう生きていけないと嘆く。どうしたらよいかと次々に友達に相談するが、皆の答えは「わたしのせなかにもかなしみはいっぱいです」。でんでん虫は悲しみは誰でも持っていると気付く。「わたしはわたしのかなしみをこらえていかなきゃならない」と悟り、嘆くのをやめたというお話だ◆大学共通テストの試験会場の東京大学で、17歳の少年が受験生ら3人を刃物で刺す事件があった。報道によると少年は、成績を苦に人を殺して死のうと思ったとの趣旨の供述をしている◆身勝手な犯行にあぜんとする。最近、電車内や飲食店、医院といった公共の場で無関係の人を巻き込む事件が相次いだ。自暴自棄からの犯行とみられるが、被害者の心情を思うと憤りを覚える。自分だけが不運だと思っているのか◆周りに悩んだり悲しんだりしている人はいないだろうか。目を配りたい。個々の胸の内を計り知ることはできないけれど、寄り添うことはできる。でんでん虫の話はそう教えている気がする。