連載・特集

2022.1.16みすず野

 四季の中で、最も読書に適した季節はいつか、という問いがあったら「冬」と答える。冬がやってくるたびに読みたい本を何冊も買い込み、時間がある限り暖かい部屋で時々うとうとしながらページを繰る。冬以外は猫の額ほどの田畑に出ていると、休日はすぐ終わる▼「冬は読書」と帯の背に書かれた本がある。『冬の本』(196ページ、夏葉社)の書名で、「冬」と「本」をテーマに、作家、歌人、古書店主翻訳家、書店員など84人のエッセーを収める。1編は見開き2ページで、約1000字。掲載は筆者名の五十音順で、巻末に筆者の紹介と取り上げた本の出版社や発行年、絶版の場合は入手の難易度などを載せる▼文筆家・荻原魚雷は「冬眠居にて」の題で私小説作家の尾崎一雄の『冬眠先生慌てる』を挙げる。「わたしは尾崎一雄から、弱っているときや寒いときは寝ていたほうがいいという人生の真理を学んだ。寝ているうちに春が来る」と記す▼「春の本」「夏の本」だと趣向が合わない。冬が温暖な地方でもぴったりこない。和田誠が描くこの本の表紙のように、雪が降るなどの状況での読書が、人を引きつけるのかもしれない。

連載・特集

もっと見る