連載・特集

2021.12.5みすず野

 陰暦12月の呼び方は「師走」。なぜか12月だけ陰暦の呼称が頻繁に使われる。「師走の街には」とはいうけれど「睦月の街には」とは使われない。ひとつには12月が一年最後の月という特別なポジションにあるからだろうか▼「三冬月」が師走同様この月の呼び方だと知ったのは学生の頃。俳優の下條アトムさんが作詞して自ら歌った「春秋暑寒」という歌にあった。睦月、如月と一年の月を詠み込み、12月は「一年過ぎし三冬月」と歌われる。師走では歌詞になじまなかったのかもしれない▼この歌を作った青年が、自主制作でレコードにするという物語として、下條さんが青年役で民放の単発ドラマになった。昭和50(1975)年11月でレコードはその前に発売されていた。二つ折りのジャケットの表紙は、若い多くの熱烈なファンがいた漫画家・永島慎二が描く▼裏は下條さんがビルを背景に道路に腹ばいになり、赤い缶と丸椅子を手にする。どこがどうと説明できるものではないが、いかにも当時の永島ファンが好みそうな雰囲気の写真。あの年の三冬月がここにある。数十年後へ、今年の三冬月を伝えるものは、さて何だろうか。