連載・特集

2021.12.26みすず野

 塩尻市の旧中山道・奈良井宿は鳥居峠上り口にある鎮神社から北へ約1キロ、緩やかに下りながら宿場町を形成している。この中に、宗派の異なる寺が五つも建つ。その理由は定かではないが、宿場が大きい割に旅籠が少なく、大名行列の宿の役割も果たしていたとされる▼寺は南から浄龍寺、長泉寺、大宝寺、法然寺、専念寺の順にある。大みそかの夜、鐘楼がない一つの寺を除き、午後11時30分から45分ころにかけて、四つの寺が一斉に除夜の鐘を突き始める▼寺により異なるようだが、まず住職が突き、その後、希望する参拝者も突けるという段取りになっている。1キロ足らずの距離の間で、4種類の鐘の音が響くことになる。宿場で生まれ育った60代の男性は「あの音はあの寺、この音はこの寺と聞き分けるのが楽しい」と話された▼二年参りの参拝者は、まず鎮神社で柏手を打ち、それからそれぞれの寺に足を運ぶようだ。これはある寺の住職から「そんな傾向のような気がします」と教えられた。コロナ禍が一息つき、例年だとシーズンオフの宿場に観光客の姿がある。大みそかの夜は鐘の音を楽しむ人たちが行き交いそうだ。