連載・特集

2021.10.26 みすず野

 世界に1本だけの万年筆はその後どうなったのだろう。戦後のサンフランシスコ講和会議で、首席全権の吉田茂首相が調印の署名に使った。政権与党の幹事長・増田甲子七へ吉田が贈ったと、本欄の執筆を長年担った中野幹久さんが『深志人物誌Ⅱ』に書いている◆全権団に野党の代表も加える「挙国全権」を実現させたのが増田で、その労苦をねぎらう感謝の印だった。政治家になる前の内務官僚の時、陸軍幹部に殴りかかったという逸話は高坂邦彦さんのコラムで読んだ。発言が許せなかったのだ◆増田の銅像が立つ筑北村の村長選がきょう告示される。他地域に先行して上昇を続ける高齢化率と人口減少、合併前の旧村ごとにある観光・スポーツ施設の活用法、子供たちが落ち着いて学べる環境づくり―といった課題を本紙の連載が挙げていた。新人の一騎打ちが伝えられる。選挙結果は村の針路も大きく左右しよう◆歴史的な万年筆。外務省から100万円での譲渡を求められ、増田は「たとえ1億円でも金で譲るつもりはない」と突っぱねた。相手が誰であろうと歯に衣着せぬ物言いや、信州人らしい気骨が今日すがすがしく映る。