連載・特集

みすず野 2021.10.25

 早春賦愛唱会の西山紀子さんがチラシを持って来社された。12月に穂高で音楽祭を開く。これで何度目だろう。一昨年の春以来そのたび中止、延期。さぞ気落ちしていると思いきや「練習はしっかり続けていますよ。皆マスクを着けてネ」。元気そうな笑顔に救われた◆プログラムに「古関裕而の世界」とある。皆さんの気持ちの中で、昨年放映のNHK連続テレビ小説「エール」はまだ終わっていなかった。♪とんがり帽子♪長崎の鐘...。♪穂高よさらばも古関だったのか。「まぶたに浮かぶジャンダルム」◆銭湯で男湯から「椰子の実ひとつ」と口笛が流れてきて、湯船を出た若い女が「ふるさとの岸を離れて」と歌い継ぐ―幸田文の随筆にあった。戦後すぐの「リンゴの唄」が焼け野原に希望の灯をともしたと言われるが、歌にはそんな力がある。独りで口ずさむのもいいけれど、大勢で声をそろえると元気が湧く。心が通い合う◆一瞬だけ「また中止かも」と西山さんの表情が曇った。「でもね、積み重ねが大事なのよ。好きな事を一生懸命やる喜びに改めて気づいた」と笑顔が戻る。苦しい思いをしている全ての人へ、響け応援歌。