連載・特集

2021.10.16みすず野

 午前5時は今の時季まだ暗い。新聞が配達された小さな音がして起き出す。この時間だと1時間ほどかけていつもの順番で記事を読んでいく。早起きが苦にならない年になったが、その分読むスピードが落ちた▼新聞週間。高校に入学して2年半、新聞配達をした。朝、雨が降っていると今でも新聞がぬれないか気にかかる。雨の日は本当に嫌で、新聞をぬらさないよう体を覆いかぶせて歩いた。各世帯ごとに購読している新聞の組み合わせが異なるので、間違えないように順番に重ねて出発する▼配達が終わるころ、手元にある新聞が残りの軒数より多いと大変だ。どこかの家を抜かしている。ということは、何軒かは誤配になっている。今来た順路を逆にたどらなければいけない。何度かこういうことがあり、社会人になってからも夢に見た▼当時の新聞にはグアム島で旧日本兵発見、連合赤軍事件、札幌・ミュンヘンオリンピック、アメリカが北爆停止などの見出しが大きく印刷されていた。半世紀も昔の話。雨の日も雪の朝も新聞はまだ暗い中、多くの人の手を経て配達される。読者に届ける方法は、あの日も今朝も変わっていない。