連載・特集

第2部エピローグ 地域の将来私たちが描く 近未来の松本大胆予測

読者アンケートで「中信地域の観光地ナンバーワン」を尋ねたところ、松本城と人気を分けた上高地。他に美ケ原高原や松本市美術館、安曇野も挙がった

 タイムマシンの行き先を「2031年9月19日」に設定してみよう。ちょうど10年後、松本の街は今とどう変わっているだろう。市民タイムス創刊50周年企画「未来をひらく」の第2部は、松本市を中心とした中信地方がこれからも誇り高く、住みやすくて元気な地域であり続けるための視点を考えた。プロローグも含め11回の連載と、インターネットでの読者アンケートに寄せられた声を基に、「リチャージ(再充電)」された「まつもと」を描いてみる。

 機体が大きく傾いて旋回した。「当機は松本空港へ向かって高度を下げてまいります」とアナウンスが流れる。北アルプスを右手に望み、眼下には黄金田が広がる。
 10年前に一日5~6往復だった路線は就航先も便数も格段に増えた。国際線の到着口からウイルス検査を済ませた乗客があふれる。「広い空港ね」と友達が感心しきりだ。「昔は搭乗待合室に120席しかなかった」と教えながらレストラン街へ向かう。
 松本・塩尻市内の全区間が4車線になった国道19号を通って、連絡バスが松本駅前に着いた。すっかりJ1に定着した松本山雅FCの旗が通りにはためく。山雅は、市民と共に野菜を作って食育も担うなど、今や地域に欠かせない存在となっている。
 LRT(次世代型路面電車システム)の低床車両が停留所に滑り込んできた。近い将来、軌道を市内全域に広げる計画だという。
 駅前一帯の街並みは数年前の国民スポーツ大会を契機に大きく様変わりした。斬新なデザインの駅舎は「松本らしい」と観光客にも好評だ。
 「さあ世界遺産の国宝松本城へ」と友達がせかす。LRTに飛び乗った。通りを走る車は少ない。公共交通の充実や道路の拡幅、右折レーンの新設で、かつて悪評の筆頭だった市内の渋滞は昔語りになった。車両進入禁止の道路を歩く子供たちや、専用レーンを走る自転車が見えた。
 世界遺産登録を目指す運動の過程で、市民の手でお城を守る機運がより高まった。武将や姫に扮した「おもてなし隊」もいる。旧開智学校への「国宝ロード」で喫茶店に寄った。「街なかの魅力づくりや、先端技術の集積が行政と民間の連携で進められたって書いてあるわ」。友達がガイドブックを見て話す。何だか誇らしい気持ちになった。
 LRTで松本駅に戻り、上高地線のホームで電車を待った。先ほどの喫茶店で隣り合わせた熟年夫婦は、中部縦貫道で岐阜県の高山市から白川郷、さらに福井県の東尋坊へ足を延ばす、と言っていた。翌朝に河童橋から仰いだ穂高連峰の眺めは素晴らしかった。「さすがは世界に知られた山岳景勝地だ」
 東京へ帰る友達を松本駅で見送った。駅ビルでお土産を買う。わさび漬けと石垣サブレ、信州そば...地元産ワインは種類がたくさんあって少し迷った。ブドウ栽培も手掛けているというワイナリーの1本を選んだ。「次の機会には安曇野か塩尻・木曽路を案内するよ」。改札の向こうで彼女が手を振り返した。
 これからもここに住み続けたい、ぜひ訪れてみたいと思ってもらえる地域をつくるには、「住む人が誇りを持てるまちづくりが重要だ」(松本大学・山根宏文教授)―との言葉が胸に残った。「まつもと」を愛し、他に負けないまちにと汗をかいた先人の志にも学びたい。
 「未来をひらく」の第2部「まつもと×リチャージ」はこれで終わります。