連載・特集

第2部③産業都市の勢い伸ばせ 先端技術集積 官民連携で

新松本工業団地に進出したユカシカドの栄養検査キット。産学官連携団体やNPO法人と連携し、疾病予測の仕組みづくりに向けてデータ収集する実証実験に取り組んだ

 県内市町村別の製造品出荷額(令和2年工業統計調査、県分速報値)は、松本、塩尻、安曇野の3市が上位5位以内にランクインしている。松本平は県内有数の製造業の集積地として、長く信州の産業をけん引してきた。一方で近年は先端技術が加速度的に進化し、地域の産業形態も転換期を迎えている。培ってきた下地を生かしながら未来への発展につなげられるか、企業や行政の取り組みが問われる。

 「大量生産・薄利多売から高付加価値へ転換を目指して造った工業団地。その一つの成果、ゴールを示せた」。松本市商工課の工業振興担当・丸山行康課長補佐は、松本地方3市で造成済みの工業団地の中で最も「若い」同市和田の新松本工業団地についてこう語る。
 生産技術の高度化や高付加価値化に取り組む知識集約型企業の集積を目指し、平成24(2012)年に分譲を開始。令和元年に2社が用地取得を決め、全13区画が埋まった。最後に用地取得を決めたうちの1社、栄養検査や栄養補助食品・サプリメントの開発を手掛けるユカシカド(東京都)は、産学官連携団体や地元NPOと疾病予測の仕組みづくりに向けた実証実験に取り組むなど、早くも地域と連携して動き始めている。
 製造業集積地としての歩みは一つの節目を迎えた。地域の産業が高付加価値化に活路を見いだす中、鍵となるのが先端技術だ。丸山課長補佐は「ここ数年で先端技術は外せない要素となった。それらの活用を通じて、市内産業をさらに後押ししていきたい」と話す。
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 ICT(情報通信技術)、AI(人工知能)などの開発のスピードが上がり、それらの技術でビジネスや生活の質を向上させる「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の言葉も頻繁に聞かれるようになった。新型コロナウイルス禍に伴うオンライン需要も、その流れを速めている。
 先端技術を地域の産業発展につなげるためには、企業、行政、地域の連携が欠かせない。塩尻市が大門八番町に設置しているICT関連企業の集積拠点・塩尻インキュベーションプラザ(SIP)には、独自の技術を持った県内外の13社が入居している。指定管理を担う市振興公社の古畑耕司理事長は「市内は中小製造業が多いが、単独だとICTの導入や活用する人材の育成が難しい。SIPの入居企業との連携でそこを後押ししたい」と拠点の意義を語る。
 民間シンクタンク・長野経済研究所の小澤吉則調査部長は、コロナ禍で経済の先行きが不透明な中「行政が地域の産業の目指す方向性を『旗印』としてはっきりと示すことが大事」と助言する。