連載・特集

第2部②高規格道整備急げ 中部縦貫観光・防災の要に

中部縦貫道・松本波田道路の工事現場。高架橋の橋脚が姿を現した(松本市波田)

 松本市から岐阜県高山市に延びる国道158号は生活道路であり、岳都・松本が誇る景勝地の上高地や乗鞍高原、白骨温泉などへのアクセス路でもある。「災害があれば通行止め。大型車のすれ違いさえ困難。そんな状態では安心して観光に来られない。広く安全な道の完成は私たちの悲願だ」。松本市安曇・奈川地区の観光関連団体などで組織する一般社団法人・松本市アルプス山岳郷の齋藤元紀代表理事はそう言葉を強める。事実、平成9(1997)年に県境に中部縦貫自動車道・安房トンネルが開通して以降、道路環境が整った岐阜県から上高地に入る車両が大幅に増えた。

 松本市を起点に、高山市を経由して福井市に至る全長16キロの高規格幹線道路・中部縦貫自動車道。完成すれば、松本から福井までの移動時間が現況の4時間35分から2時間55分に、同じく高山市までは2時間から1時間10分にと短縮される。上高地をはじめ高山、世界文化遺産の白川郷(岐阜県)、国天然記念物の東尋坊(福井)など、バラエティーに富んだ観光地を結ぶ広域ルートの形成も可能だ。
 しかし事業決定から34年経過した現在、整備完了区間は全体の4割に満たない。福井県内は令和8年に全線開通の見通しが立った一方、長野県区間の遅れは著しい。松本波田道路(松本市島立―波田、5・3キロ)は平成11(1999)年に都市計画決定されたものの事業は事実上中断。23年度に再開され、着工できたのは令和元年度だった。波田―中ノ湯(27キロ)区間に至っては未着手だ。
 松本地域の経済団体などでつくる「中部縦貫自動車道の早期建設を進める会」会長の井上保・松本商工会議所会頭は「安定したルートを確保することで災害時でも先を読むことができ、地域の生活基盤を安定させる。道路はつながらないと意味がない」と焦りをにじませる。
 中部縦貫道によって長野道、東海北陸道、北陸道が相互に結ばれ、中部・北陸地方に広大な高速交通網が誕生する。太平洋側と日本海側をつなぐ大動脈となる。交通政策に詳しい名古屋大学大学院環境学研究科の加藤博和教授は「松本は既に、ネットワークから取り残されている」と指摘し、広域的な視点で道路の役割を考えてほしいと促す。「例えば高山市の市民は松本に対して魅力を感じ、期待を寄せている。『北アルプスの西側』に目を向ければ可能性が広がる」
 中部縦貫道の必要性と可能性を市民がどう捉えるかが、建設推進の鍵となる。