連載・特集

2021.9.4みすず野

 「サザエさん」の作者・長谷川町子さんは、吉田茂首相をどう思うか尋ねられ、漫画になる顔だから好きだと答えた。昭和20年代半ばのころだ。政界のある古老は、政治家にとってあだ名は一財産であり、吉田首相の「ワンマン」というあだ名をうらやんだ▼これは丸谷才一『軽いつづら』(新潮社)からの受け売り。著者はこの二つで吉田茂以上にすごかった人がいるとして、昭和4(1929)年~6年に首相を務めた浜口雄幸を挙げる。ライオンというあだ名は、その風貌からつけられた。つまり漫画になりやすかった。「その点、近ごろの連中はみな駄目ですなあ」と手厳しい▼菅義偉首相が総裁選挙不出馬を表明した。昨年9月、安倍晋三首相が持病悪化で辞任した後を引き継いだ。安倍内閣を官房長官として約7年支え、新型コロナウイルス感染拡大の対策に引き続き取り組んだが、後手後手に回った。最近は就任以来最低の内閣支持率が報じられていた▼安倍前首相、菅首相ともあだ名らしいものはなかったと認識する。漫画の題材としてはどうか。政治家に毀誉褒貶は付きものだがこの二つを備えている人は確かに少ない。