連載・特集

2021.7.8 みすず野

 昨今、雑誌の表紙や特集などで「大人の〇〇」の見出しを目にする。「大人の一人旅」とか「大人の歌謡曲」の類いである。何歳くらいからを「大人」と指しているのか定かでないが、若いころとはひと味もふた味も違い、大人の楽しみは深いんだよ、と差別化を図っている◆年を取ってわかることは多いけれど、大人が時代の変化について行けず、ノスタルジーに浸らざるを得ないと言えなくもない。デジタル化がその典型で、国全体のデジタル化、オンライン化の遅れが、コロナ下で明らかになり、もはや日本は先進国ではない、との認識を持った人も◆とはいえ、すべてデジタル化された仕事や生活は殺風景だ。潤いがない。例えば文房具。万年筆が1本あるだけで違う。使い続ければ続けるほど手になじみ、持ち歩くことが楽しくなる。いつ使うの? と聞かれそうだが、大概はがき、手紙を書くときで、メールやラインのやり取りとは、全く異なる味わいがある◆はがきがきた人にははがき、手紙には手紙で返信する。万年筆を取り出し、キャップをはずし、インクを確かめ、書き始める。これこそ「大人の〇〇」ではあるまいか。