連載・特集

2021.7.4みすず野

 「源頼朝、お中元にそうめんを贈る!」と見出しが躍る。天台座主の名代へ「索餅」を贈った―との記述が吾妻鏡に見え、小麦が主原料の製法は今日の手延べと基本同じだという(『信長の朝ごはん龍馬のお弁当』毎日新聞社)◆お中元コーナーが設けられ、経済記事を兼ねた季節の話題になる。遠方への帰省や訪問がしにくいなか感謝の気持ちを伝えようと、いつもより高価な品を選ぶ傾向や、贈るだけでなく自分も楽しむ自宅消費がトレンド―とあった◆なぜ食品を贈り合うのか。『贈答の日本文化』(筑摩選書)によると、食物にいち早く気づいたのは―ケ(日常)とハレ(非日常)の柳田國男だった。祭りなどのハレの日に特殊な物を一緒に食べなければならぬと思う。それが残っているのだと。自宅消費は新しい流れだが、意識に潜む先祖の気持ちを商魂がうまくつかんだと言えるかもしれない◆売り場をのぞくと全国各地のおいしそうな産品やビール、食用油といった定番が並ぶ。当地は付き合いを重んじる義理堅い人がまだ多いようだ。そんな感想を巡らせていたら、普段は食べる機会のない三輪そうめんの前で足が止まった。