連載・特集

2021.7.21みすず野

 せんだって、来訪してくれた同世代の元教員の男性が「首相をはじめ、えらい政治家の発する言葉から心が全く伝わって来ない。政治家ほど言葉を大事にしなければいけない仕事はないと思うが」と嘆いていた。同じ日、同世代の書店経営者とのコーヒータイム◆「美しい日本語ってたくさんあるけれど、どんどん忘れられ、特に政治家から聞かれたためしがない」と話したら、「政治家にそれを求めても土台無理。むしろ忘れるのが政治家の務めだから」と返された。気を取り直し、店内を回って手にしたのが国文学者・中西進さんの『日本人の忘れもの』(ウェッジ文庫)◆日本人が心豊かに生きるために思い出すべき言葉を取り上げ、その言葉の元々の意味と、いまの時代に中西さんが何を感じ、危惧しているかを記したエッセー集だった。中西さんには『美しい日本語の風景』『日本人の愛した言葉』といった著書もある◆『ことばのこころ』の「夏のことば」の一つは「青時雨」。青葉からこぼれる滴が、時雨のように降るさまを指し、少年時代の父母の思い出とともつづられている。美しい日本語を知ると同時に用いたいと思う。