連載・特集

2021.6.16みすず野

 寺子屋とは江戸時代、庶民の子弟に「読み書きそろばん」の基礎知識から、実生活の技術までを教育した民間の施設で、全国各地にあった。明治初期、わが国の識字率の高さは世界でも抜きん出ていた◆近代化が急速に図れたのは、この識字率の高さが根底にあり、寺子屋の果たした役割の大きさを、あらためて知るところとなる。塩尻市立図書館の「信州しおじり 本の寺子屋」が10周年を迎え、著名人による15本の講演会、6本の企画展を計画しているという。本の寺子屋の歩みと充実ぶりに驚かされる◆「昔の寺子屋にあやかりたい」。発案したのは、河出書房新社の雑誌『文藝』の元編集長・長田洋一さん(安曇野市)。松本市内の喫茶店でお会いし、「こんな時代だからこそ、本の魅力を発信し、子どもから大人まで想像力を広げる場を提供したい」と語られたのを思い出す。出版人としての使命感もあったに相違ない◆ネットの浸透などで、本が読まれない、売れないのは事実だろうが、その魅力が薄れたわけではない。書物を傍らに40年以上仕事をしてきた者からすると、本の価値は実に大きくて、魅力はむしろ増している。