連載・特集

2021.4.5みすず野

 山林や荒野を開墾し、そこに水を引いて田畑に変え、米など食物を作る。それが最も肝要な施策であり、豊かな国づくりになる、と信じられていた時代があった。戦後の高度経済成長期前までは、事実そうだった。いまは先人が苦労に苦労を重ねて田畑に変えた地が、逆に耕作放棄地と化している◆耕作放棄しても、食料輸入などで食べてゆけるからだ。そして勤めたほうが、効率的に手っ取り早く稼げ、家族を養いやすい。これは農家に育ちながら、農家を継がず、40年間勤めた身を振り返ると、よくわかる。経済優先の生活においては「正解」だったと言える。しかし、何か大事なものを捨てた、置き去りにした◆この思いは、経済成長を支えた団塊の世代から、現役をぼつぼつ退くその下の世代に共通していまいか。大事なものは「ふるさと」、あるいは「土」だったとすると、そこに帰る人がもっと出て来れば、地方再生につながる◆先日、本紙の「口差点」に松本市の85歳の男性が、「ことしも野菜作りを頑張る」と寄稿していた。手本となる先輩は身近にいるのだ。本当の正解を求め、今春から農ある暮らしを始めてみますか。