連載・特集

2021.4.23 みすず野

 「葬式仏教」と揶揄される仏教だが、元々はその意味ではなく、仏教が広く浸透するのは葬式を担うようになってからだ、という良い意味だったらしい。それはさておき、超長寿社会が一気に来て、葬式の価値が変容したのはまちがいない◆90~100歳以上まで生きられた方は、大往生であって、葬式が故人を悼み悲しむものではなくなった。故人の友人、関係者は参列しない(できない)、家柄や世間体も気にしなくていいとあれば、家族葬で十分、と考えるのが自然であろう。それともう一つ◆仏教のみならず、宗教が果たす役割が明らかに薄れた。その昔、現世は苦しいことばかりで、しかも50年くらいと短かった。楽しいあの世(極楽)を信じて歯を食いしばって生き、あの世を説く宗教にすがった。だが、いまは科学万能、加えて長寿。あの世を信じなくても、宗教に頼らなくても長く生きられる◆特定の宗教は要らないが、私たちの中に素朴な信仰心はあって、寺社を巡り手を合わせ、安らぎを得たい。民俗学の窪田雅之さんから新刊『観音札所百番めぐり』をいただき、対話を交わしながら、そういう時代なのだと思った。