連載・特集

2021.4.2 みすず野

 「花冷え」という、これもまた美しい日本語がある。桜の花の満開のころ、ぽかぽか陽気に身心とも和らぎ、花見に行こうと、その気になるのだが、一転、急に寒さが来て、ぶるぶる震えながらの見物、夜桜会となる◆松本城公園や女鳥羽川沿いなど松本市街地の桜が、早くも満開を迎えた。コロナ下とはいえ、この週末、花見客でにぎわいそうだ。桜前線は一気に周辺部、山間部に上って行く。毎年のように花冷えの日が訪れるが、ことしの陽気ではないかもしれない。けれど、あまり暖かすぎると、農作物の成長や開花が進んでしまい、遅霜などの心配がある◆当地を含め、信州にも桜の名所は数多い。名所それぞれに桜の歴史があり、あるいは伝説が。人の名前で呼ばれる桜の代表と言えば、「西行桜」。平安後期の歌人・西行が、ことさら桜を愛し、桜の歌を残していることから、ゆかりの桜に付けられた。信州には西行桜どこかにあるのだろうか◆宴を楽しめないなら、静かにお気に入りの桜と向き合うのも悪くない。名所でなくてもいいのだ。「ことしも咲いてくれた」と、命の華やぎを見つめ、その再会を喜ぶというような。