連載・特集

2021.4.19 みすず野

 「〇〇家の墓」の立派な墓石が据えられた、いわゆる先祖代々の墓はずっと昔からあったように思っているが、実はそうではなく、火葬が普及してからである。都市郊外に大規模な霊園が整備されたのも高度経済成長期だ◆土葬だと、埋葬した場所が陥没してしまうため、墓石を建てることができないという事情もあった。やがて車時代が到来し、車なら遠くの霊園まで行ける。つまり、一般の家が墓地を買うなどして、先祖代々の墓として整備したのは戦後なのである。そしていま、その墓じまいが盛んに言われる。墓を守ろうにも後継者がいない◆家の存続を何より重んじていた時代、家に子どもが生まれなければ、親戚などの子だくさんの家から養子を迎えて、家を継がせた。それが核家族化し、未婚化、少子化が進んで、家の存続自体が厳しい。墓を守れないのは道理である。松本市の中山霊園に設けられた樹木墓地(合葬墓の一つ)が、生前申請を受け付けたところ人気という◆もう墓は要らない、維持できない、樹木墓地いいね、そんな時世が訪れたのだ。見ようによっては、家は戻らないが墓は昔の形態に戻った、とも言える。