連載・特集

2021.4.1 みすず野

 明治の文豪、島崎藤村は明治32(1899)年4月、小諸義塾に教師として赴き、同時に結婚して新生活をスタートさせた。33歳までの5年間をここで過ごし、浅間山麓の自然や山国の人々とのふれあいを、「千曲川のスケッチ」と題してつづった◆美文意識を捨て、事物を正しく写生しようと試み、詩人から小説家へと脱皮した。「あの白雪の残った遠い山山―(中略)朝の光を帯びて私の眼に映った時から、私はもう以前の自分ではないような気がしました、何んとなく私の内部には別のものが始まったような気がしました」。藤村は機会ある度、新しく生きよう、生き直そうとの思いを持った人だ◆藤村の最初の自伝小説『春』も、新しい時代の到来で解放された若者が、新生の道をもだえ苦しみながら探し、「ああ、自分のようなものでも、どうかして生きたい」と締めくくっている。4月、中信地方の企業や役所で、多くの新人を迎えて、新年度がスタートする◆真新しいスーツに身を包み、緊張した面持ちの新社会人たちの姿は、清新でいいものである。先輩、ベテランにとっても気持ちを新たにできる絶好の機会と言えよう。