連載・特集

2021.3.6みすず野

 〈久方の月の桂も折るばかり家の風をも吹かせてし哉〉―拾遺和歌集に載るこの歌を詠んだのは学問の神様・菅原道真の母。中国で「桂を折る」は科挙(官吏登用試験)に合格すること。家名隆盛と息子の及第を願った。時に道真15歳。受験生と家族の祈りが聞こえてきそうだ◆広辞苑が挙げる出典は源氏物語。光源氏の子である夕霧の元へ、人目を忍ぶ恋人が寄せた返歌の〈桂を折りし人や知るらむ〉で、続く〈はかせならでは〉は瀬戸内寂聴さんの訳だと「あなたのような学者でなければわかりませんわ」となる◆事業者が仕掛ける接待攻勢に、かつて難関を突破した人たちの心のたがが緩む。桂を折ったときの志はどこへ。一方で、学生諸君はコロナ禍で環境の激変や不安に振り回されたうえ、あたかも感染拡大の元凶と言わんばかりの「若者」とひとくくりにされ、それなのに政治家や官僚は夜の会食か。ちまたで聞く怒りの声ごもっとも◆公立高校入試の後期選抜が9日に迫る。冒頭の歌を縁起担ぎで引いたのだが、話がそれてしまった。気を取り直し、菅公の母ならぬ身も受験生のために「桂を折るほどの風よ吹け」と祈りたい。

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