連載・特集

2021.2.22 みすず野

 人はパンのみに生くるにあらず」。人は神のことば(意志)によって生かされている、が本来の意味というが、人はお金や物を得るためだけに生きているのではなく、精神の充足が大切である、と解されている◆『新約聖書』が出典。コロナ禍によって、その日の生活にも難渋する人や店などが増え、松本市の総合相談窓口(コールセンター)に寄せられる相談件数も増えているようだ。一方で人は、食べるに不自由せず、物に囲まれて生活できれば、それで満足かというと、決してそうではない◆心の渇きがどこかにあって、その渇きが何らかの行動に駆り立てる。古今東西、渇きを覚え、果てしない旅に出て、旅の途中に死んだ人は数え切れない。例えば「遊行聖」と呼ばれた一遍は、過酷な旅を続けて50歳で死ぬ。最後は経典まで焼き捨て、「一代聖教みなつきて、南無阿弥陀仏になりはてぬ」と言ったと伝わる◆神というか、仏の声が聞こえ、突き動かされて旅の生涯を送ったのだ。私たちは安定した生活を求め、それらを築いた人を無条件に認めるが、生活を超えた何かを求め、精神の領域に生きる人もいるにはいるのである。