連載・特集

2021.2.2 みすず野

 「市中騒擾の光景を見に行きたくは思へど降雪と寒気とをおそれ門を出でず」と、小説家の永井荷風が日録している二・二六事件をどうとらえればいいか。陸軍の青年将校らが、部隊を率いて首相官邸などを襲撃、殺害するという日本近代史上最大のクーデター◆せんだって亡くなられた半藤一利さんは、事件後、何が残ったかについて、松本清張著『二・二六事件』の結論でまちがいない、と述べる。それは「軍部が絶えず再発(テロのこと)をちらちらさせて政・財・言論界を脅迫した。軍需産業を中心とする重工業財閥を(軍が)抱きかかえ、国民をひきずり戦争体制へ大股に歩き出す」である◆事件を起こした彼らの狙いは達せられなかったものの、これ以後、日本は陸軍が支配する国となり、日中全面戦争、太平洋戦争へと突き進んでしまう。事件の持つ歴史的意味は、極めて大きかった。昭和11(1936)年のきょうの出来事だ◆国民が知らないところで、軍と政治と財閥が結託し、戦争体制を作り上げていったということで、85年の歳月がたって記憶する人は少なくなったが、決して忘れてしまってはいけない動乱であった。

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