政治・経済

水道事業DX 松本市 ドローンで状況確認

令和2年7月豪雨の市道崩落で寸断された配水管。職員が現場確認する真下に梓川の濁流が迫る(昨年7月8日、松本市上下水道局提供)

 松本市上下水道局が令和3年度から、デジタル技術を活用して事業の効率化や合理化を図る「水道DX(デジタルトランスフォーメーション)」に乗り出す。遠隔地との情報通信に用いるドローン(小型無人機)やウェアラブルカメラの導入から、将来に向けて実現可能性を探る地下埋設物の三次元化まで推進項目は多岐にわたる。近年頻発する豪雨災害や大規模地震への備えのほか、熟練技術者らの大量退職に伴う人材育成が喫緊の課題となる中、先端技術を取り入れることで生活用水の永続的な安定供給につなげていく考えだ。


 内閣府の国家戦略特区指定を狙う市のスーパーシティ構想とは別に、公営企業として独自に取り組む。
 3年度はドローンとウェアラブルカメラを各1台予算要望した。ドローンは市域の8割を森林が占める松本市において、職員の派遣が難しい現場の状況確認や巡視・点検に活用することで効果が期待される。ウェアラブルカメラは映像を含め現場と本部の双方向の通信を可能にする。
 昨年の7月豪雨では安曇沢渡の市道崩落で配水管が断絶し、沢渡配水池の水位が急激に低下するトラブルがあった。天候や足場の悪い中、職員が1時間余りかけて現地入りし、状況を確認・対応したという。上水道課は「命の危険と隣り合わせだった。水害から大雪までさまざまな災害が想定される中、ドローンの試行を重ねて有用性を検証したい」とする。
 今後予想されるベテラン職員の大量退職にも水道DXの応用を検討する。水道事業は高い専門性や経験が求められるが、組織の合理化や少子化、技術職を志す若者の減少などを背景に、同局の職員は約4割が50代以上だ。
 そこで熟練技術者らの経験をデータベース化して組織で共有し、将来の人材育成にも役立てる「ナレッジマネジメント」の研究も進めていく。情報の収集や蓄積にはドローンやウェアラブルカメラのほか既に導入しているタブレットの活用なども想定する。同課は「蓄積する経験知は大きいほどいい。県や国の動向も注視したい」とした。
 水道局は3年度から10年間の運営指針として策定する「市水道ビジョン」に水道DXの推進も盛り込む考え。この中には水道管やその他の地下埋設物を三次元で可視化する「アイ・コンストラクション」の構想も記載する予定で、短期・長期両面からDXの可能性を探る。喜多村博章・総務課長は「いずれも安心安全な水を安定的に供給する使命のため。新たな一年も粛々と業務にまい進したい」と話している。