連載・特集

2021.1.11 みすず野

 多くの人は学業を終えた後、会社や組織に属し、そこでそれぞれの役割を担って生きる。役割を担う際、手元に置き、人と会うと差し出すのが名刺だ。相手からはそれをもらって、一番の判断材料とする。社会は名刺、肩書で成り立っていると言ってもいい◆これからの時代、65歳過ぎまで働くとしたら、この「名刺生活」は長い。新成人の皆さんは、すでにそれを始めている人もいるし、近い将来そうなる人も。名刺の文字は、年齢やポジションに応じて変わってゆくけれど、自分の名刺に誇りを持ち、堂々と差し出せる人になってほしい◆ただし、名刺や肩書がすべてではない。肩書以外、何もつちかえないとしたら、その人の人生は決して豊かとは言えまい。というのは、誰でもいつかは名刺や肩書のない、一個の人間に戻る。素の自分に戻る。そのとき何もない、何もすることがない、誰も周りにいないでは、いかにも寂しい◆少子高齢社会に歯止めはかからず、皆さんの肩にのしかかる荷は重い。名刺と名刺以外の人間の両方を磨き、コロナ禍など想定外のことが起きる世の中を、たくましく生き抜いてもらいたい、と切に願う。