連載・特集

2020.11.28みすず野

 手作業には理念がある。かつて「こけらぶき」の工程を見学させてもらったとき、職人が言った。口にくわえた木くぎで次々と薄いサワラの板を打ち付けながら「機械で均一な厚さに割れるが、手で割ることによってわずかな厚さの差が板と板の間に隙間をつくり、中に入った雨水を外へ出している」のだと◆下見板の漆黒と白しっくいのコントラストがつくる松本城天守の美しさは、漆の塗り替えが脈々と続けられていればこそ。ヒノキの樹皮を剥いだり、かんなの刃を研いだり―身近にも技と理念が受け継がれている。知る機会は限られるけれど◆木造の伝統建築を守り伝える匠の技が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録へ、と報じられた。能楽や歌舞伎、和食などより早くても良かったと思う。漆かきや左官、建具、かや屋根や瓦のふき替え...関心の高まりが後継を志す人たちの励みと育ちにつながるといい◆奈良の室生寺を訪ねたのは10年ほど前だろうか。表門の石碑に「女人高野」と刻む。檜皮ぶきの国宝五重塔へと向かう石段沿いがシャクナゲの花でピンク色に染まるそうだ。果たして春に行かれるかしら。

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