連載・特集

2020.11.22 みすず野

 地球最後の日に何を食べるかと問われ、ひとしきりステーキだのすしだのと言っていた人も大抵は「やっぱり炊きたてご飯と、みそ汁だな」となる。お膳に香の物があればいい。母親がぬか床で漬けたキュウリの味を思い出す◆お菜やたくあんを漬け込む時季になった。江戸時代の偉いお坊さん「沢庵」があみ出したとか。東京・日本橋でえびす講の前夜に立つ「べったら市」の名は浅漬け大根を売ったのが由来とか。うなぎ屋が「串打ち3年、裂き8年―」ならたくあん漬けは「干し3年、樽取り5年、床一生」◆『漬けもの博物誌』(八坂書房)に教わる。一口にたくあんといっても白くて甘かったり細身で辛口だったりとさまざまで、伊勢や阿波など地名を冠した特産も多い。秋田のいぶりがっこは近ごろ有名になった。同書は木曽のすんきや松本のセロリかす漬けも項を立てて紹介している◆有明山麓に伝統野菜の牧大根を求める行列ができていたので、釣られて1袋買ってきた。漬け方を知らない家人が直売所に電話して、材料や手順を教えてもらっている。「干し3年」まで待てないが、取りあえず来年2月に食べられるそうだ。