連載・特集

2020.11.18 みすず野

 作家の五木寛之さんが、本紙創刊30周年記念の特別講演会で来られ、「日本人の忘れもの」と題して県松本文化会館(現在のキッセイ文化ホール)で語られて、20年近くになる。講演前に30分ほど時間をいただき、直接話を伺った◆当時五木さんは、「他力の思想」を盛んに説いており、「大きなものへのおそれや、人は罪深い存在であるという信仰が、日本人の生活の中には染み込んでいたが、それをなくした」「蓮如さんの生きた中世と、いまの状況は似ている。魂の再生が叫ばれるゆえんです」と、静かな口調で言われた◆この五木さんの一冊『わが人生の歌がたり』(角川書店)は、戦時下の流行歌、敗戦による朝鮮からの脱出体験を支えてくれた歌、戦後の貧しさの中で聞いた歌など、思い出の歌エッセー。「湖畔の宿」「誰か故郷を想わざる」「リンゴの唄」「異国の丘」「雪の降る町を」...◆「つらい時、悲しい時、私は歌をうたって生きてきた。いまは忘れられかけた昭和の歌で、自分の生涯が影絵のように浮かび上がる」と五木さん。コロナ禍はそれぞれの心に傷を刻んだが、応援歌を持つことで埋められるのではないか。         

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