連載・特集

2020.11.15みすず野

 坂本龍馬と中岡慎太郎は大政奉還1カ月後の慶応3(1867)年11月15日、京都の近江屋で何者かに襲撃された。河原町通りに面して石碑が立つ。2人が軍鶏鍋を食べていたというのは本当だろうか。鍋料理が恋しい季節になった◆「鍋奉行」のお出ましとなる。普段おとなしい人が采配を振るのは楽しいが、元々やかましい人や上司に自任されると少し面倒だ。河出書房新社刊『ぐつぐつ、お鍋』に陶芸家の北大路魯山人が食べ方ばかりか、材料の盛り方までも〈生け花と寸分ちがわない〉と書いていた。筋金入りの奉行と言っていい◆「新しい生活様式」が当たり前になるなか、鍋料理の命運やいかに。昔は「皆で鍋をつつく」なんて言葉もあったとか、肉ばっかり取る人もいたと言うとびっくりされたりして。1人用の小さい鍋なら奉行の出番はなさそうだ◆えっ転勤?皆を集めて鍋をやろう―。鍋と聞くとなぜか送別会の思い出が浮かぶ。鍋を囲んでの歓迎会だってあったはずなのに。寒さが記憶の中で別れの寂しさや切なさと結び付いているのかも知れない。風がぐっと冬めき、上高地はきょう閉山式を行わないまま眠りに入る。

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