連載・特集

2020.11.1 みすず野

 肉と聞いて東日本の人が豚を思い浮かべるのに対し、西日本では牛だと「チコちゃんに叱られる」でやっていた。他におでんの具やウナギの割き方などに加え、そばかうどんか―も東西で好みが分かれる◆漱石が「坊ちゃん」にうどん王国・四国の松山で天ぷらそば4杯を平らげさせたのも、荷風の随筆に蕎麦屋が出てくるのも、2人が東京生まれだからだと思う。長年の舌へのなじみを変えるのはなかなか難しい。和田の窪田空穂記念館に寄ったら企画展の一首に〈塩漬のからきを添えて信濃びと飲む茶のながし囲炉裏のほとり〉◆県がこのほど「県民健康・栄養調査」の結果(速報値)をまとめた。20歳以上で食塩を取り過ぎている人の割合が男女ともに9割という。一日当たり摂取量の平均値が目標より約3グラムも多い。自分たちの〈塩漬〉を県外の人が食べたら〈からき〉こと、まず認識する必要がある◆宮崎出身の若山牧水の歌集を健診の待合室で眺めていたら〈刈株の蕎麦の根赤き霜月の香貫が原に雲雀ゐて啼く〉があった。年譜や詞書によると大正9(1920)年8月、東京を引き払い静岡・沼津の香貫山の麓に転居している。

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