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松本・杉山外科のプリウス 訪問診療支え20年 引退へ

 松本市島立の杉山外科医院(杉山敦院長)で長く在宅医療に活用されてきた初代のトヨタ・プリウスが近く引退する。約20年前に購入し、訪問診療などを支えてきた。関わってきた高齢者を在宅で看取る機会も多く、ハイブリッド車の静かな空間は、スタッフがケアを振り返り、悲しみを共有する場にもなっていた。

 プリウスは平成12(2000年)年1月、杉山院長の父で先代院長の故・昭貳さんが購入した。杉山院長は「環境性能に優れ、燃費も良い新しいシステムと感じたのではないか」と推察する。杉山院長が引き継ぎ、主に水曜日午後の訪問診療で利用されてきた。
 スタッフの間では「プリコ」の愛称で親しまれた。長年使ってきたこともあり、プリコは定員いっぱいに実習の学生を乗せ、エアコンをかけて運転をすると、調子が悪くなるときもあったが、約20年間でバッテリーを3回替え、走り続けた。大雪の日の看取りもあったといい、杉山院長は「よく走ってくれた」と感謝する。
 主に運転も担った看護師の佐々木奈美さんは「帰り道にはスタッフや実習の学生が先生に質問し、学び合う講義の場でもあった」と振り返る。静かな車内はケアを振り返ったり、忙しい院長が少し眠ったりするにも最適だったとし「さまざまな思い出がある。プリコとお別れと思うとさみしい」と語る。
 出力制限警告灯のいわゆる「カメマーク」があるのも初代の特徴だ。在宅で終末期を支えていると別れの日も訪れる。熱意を持って寄り添ってきたスタッフが、車内で泣いてしまうこともあったが、つらい帰り道にカメの姿をした灯がともると、場が少し和んだという。
 トヨタ自動車の広報は「初代プリウスが長きにわたり在宅医療に活用されたと知り、大変うれしく思います」とのコメントを寄せた。

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