連載・特集

2020.10.9みすず野

 「少年老い易く学成り難し/一寸の光陰軽んず可からず―」。よく知られた漢詩の一節。いまから800年以上前の中国南宋の思想家で、朱子学の大成者・朱熹の作とされる。ただし、朱熹の詩文集にはこの詩がないらしい◆朱熹よりさらに800年近く前、陶淵明には「―盛年重ねて来たらず/一日再び晨なり難し/時に及んで当に勉励すべし/歳月人を待たず」の雑詩がある。この勉励は勉強に励むことではなく、楽しめるときは楽しめ、という意味で、少年に学を勧める詩句と解釈するのは、作者の意図に反する、との注釈が付く(『陶淵明全集(下)』(岩波文庫)◆確かに「田園詩人」と称される陶淵明に教訓詩は似合わない。いずれにせよ「少年老い易く」「歳月人を待たず」は、年齢を重ねて身につまされる。過日小学5、6年時に同級だった友と会った際、担任の先生が繰り返しこの詩を説いてくれたな、との懐古談議に花が咲き、では誰の作か調べてみた◆還暦を過ぎて、ようやくわかることが多い。若いころはあれもこれもと思い、何でもできる気がするが、何一つ成せず、老いてしまうものと、『徒然草』にもあった。