連載・特集

2020.10.8みすず野

 本紙のコラムニストで、訪問看護ステーション所長の江森けさ子さん(松本市)が何年か前、「母の大きな塩むすび」と題して、看護師だった江森さんが帰省する度母は「食べろ、食べろ」と、大盛りの白米を出してくれた◆結婚し、子どもと一緒に里帰りすると、片手では持てないくらいの塩むすびを握ってくれた。幼い娘たちが口の周りに、米粒をいっぱいつけて頬ばる姿を喜び、釜が空になるほど握ってくれた、と書かれていた。塩むすび、味噌結び、ごま結びのこうした思い出のある年配者の方、多いにちがいない。それはうまかった◆日本人がコメを食べなくなったのは、ほかに食べ物が安くいくらでも手に入るからだが、長い歴史の中ではごく最近と言える。「貧乏人は麦を食え」ではないけれど、「白い飯を腹いっぱい食いたい」の願いがかなうまで、どれほどの時代を要したことか。コメの増産、安定供給はこの国の悲願であった◆日本のコメのうまさは、群を抜いていると言われる。一番人気のコシヒカリ以外に、90種類ほどが栽培されているそうだ。味覚としてのうまいを超え、心情的にうまいと感じるのは年のせいか。