連載・特集

2020.10.29みすず野

 秋の涼やかな夜長は、ものを考えたり、書物を読んだりすることに向く。灯火に親しむと言う。もとは中国唐代の文人・韓愈の詩から来ている。灯火親しは、俳句の季語にもなっており、宮津昭彦という人に、「燈下親しもの影のみな智慧もつごと」の句がある◆灯のともった部屋の誰とは知れない人の影であっても、知恵を持つように見えると。それが現代風の家ではなく、障子戸の民家で、障子から灯を通して影が映るようだと、余計にそう思う。一方で、「迫りくる受験子燈下親しめず」(栃木安穂)といった句もある。受験生は案外そんなものであろう◆本好きな年長者に大体共通しているのは、幼少期に母親などから与えられた、絵本なり童話なりに親しんだ経験を持つこと、その後さまざまな理由で本から離れても、青春期に集中して読んだ何年間かがあること、のようである。そういう人はいつか必ず本に帰り、本を手に生きる◆人生が豊かさへの旅だとしたら、書物は自らの心を耕し、豊かさをもたらしてくれる最たるものなのではないか。読書週間中である。本は読み始めに少し骨が折れるが、入り込めれば大丈夫。