連載・特集

2020.10.23みすず野

 春の桜前線は、里から山に上って行くが、紅葉前線は山から里に下りて来る。古代では紅葉することを「もみつ」「もみづ」と言いやがて「もみち」となり、平安時代は「もみぢ」、それが「もみじ」となったそうだ◆紅葉、黄葉のどちらも「もみじ」であり、このところの冷え込みで、街路樹まで色づき始めた。平年より早いようである。標高の高い場所は見ごろを迎え、紅葉狩りを楽しむ人たちが訪れている。上松町の赤沢自然休養林のハウチワカエデが赤く色づいたと伝えられたが、塩尻市街地のケヤキ並木の黄葉も美しい。秋晴れの日はことに目を引く◆里山もぼちぼち。春は「山笑う」、夏は「山滴る」、冬は「山眠る」、そして秋は「山粧う」と言う(いずれも俳句の季語)。まさに広葉樹の山は、錦繍を身に粧っているかのように華やぐ。しかし、それは短い間である。近年は残暑が長い期間続いた後、急に寒くなる◆ことしも北アルプスなど高山が、いきなり初冠雪を記録し、秋本番がないまま晩秋、初冬が到来した。紅葉を楽しめるわずかな日々を、思う存分に楽しみたい。「手に拾ふまでの紅葉の美しさ」(和田順子)