連載・特集

2020.10.21みすず野

 作家の新田次郎が67歳で急逝して、40年の歳月がたつ。『槍ケ岳開山』『八甲田山死の彷徨』『聖職の碑』『劔岳〈点の記〉』『武田信玄』(全4巻)などが代表作だが、いまどれくらい読まれているか◆作家の意図とは別に、のちに映画化され、その映画によって記憶に残るケースは多く、新田作品も例外ではない。「八甲田山」「聖職の碑」「劔岳 点の記」の映画はいずれも大作で、封切り後に評判を呼んだ。『聖職の碑』は大正2(1913)年8月、中央アルプス西駒ケ岳で起きた中学校登山の惨劇(台風の直撃を受け、校長と10人の生徒が遭難死)を、綿密な取材に基づいて著したもの◆映画では、主演の赤羽校長を鶴田浩二、青年白樺教師を三浦友和、田中健らが演じていた。『劔岳〈点の記〉』も原作、映画とも秀逸だった。槍ケ岳の初登頂に成功した修行僧・播隆の生涯を描いた『槍ケ岳開山』は、映画化されておらず、いつか誰かがと願ってやまない◆新田次郎を思い出したのは先日、新田文学の原点とも言える、新田の山旅を集めた随筆集『山の歳時記』(ヤマケイ文庫)の新版を手にしたからで、味わい深い一冊だ。