連載・特集

2020.10.17みすず野

 笑いの力を思う。松本落語会の月例会が過日8カ月ぶりに開かれた。オイルショック不況下の昭和48(1973)年10月に会を始めたときの掛け声が「街を盛り上げよう」だった。幾多の困難を乗り越えてきた軌跡が今の時勢と重なる◆登場人物のそそっかしさを笑ったり、時代を超えて変わらぬ人情の機微にほろりとさせられたり。笑顔が戻ってうれしい―の談話が共感を呼ぶのも伝統の力だろう。常設の寄席がない地方で、落語文化を紡ぎ続けてきた糸車が再び回り始めた。次の第538回は48年目に入る11月15日◆少し勉強しようと『落語百選』(ちくま文庫)で柳家小さん代々のおはことある「碁どろ」を読み、ユーチューブで5代目の至芸を見た。みそ汁のコマーシャルで「うまいねぇ、これでインスタントかい?」と言っていた人間国宝は松本落語会の根多帳によると、高座に3回招かれている◆赤いカラスウリが出てくるから秋だ。静まり返った夜に石を打つ音がパチリッ、パチリ。職場の薄暗がりでパソコンに向かって独り肩を揺らしていたら、帰り際の同僚に不審がられた。笑いに元気をもらう。笑いが憂さを忘れさせる。