連載・特集

2020.9.20みすず野

 『北朝の天皇』を読んだ。足利6代将軍・義教と後小松上皇のぎくしゃくした間柄は、例えるなら義教が「先輩後輩関係を苦手とする神経質な中学1年生」、一方の院は「デリカシーがない3年生」のイメージ―だと◆とかく難解で睡魔に襲われがちな中公新書にあって、この本は眠り薬代わりにならなかった。登場人物のやりとりが史料や文献の引き写しでなく、現代の言葉に訳してつづられる。後小松院が義教を和歌会へ招待したのに断られるくだりでは、院の内心も推測して「つれないヤツだな」と分かりやすい◆既成の固定化した考えを見直す点でも目からうろこが落ちる思いだった。こうあるべきだとか、そういうものではないとか。コロナ後と言われる社会が許容範囲を狭める方へ向かうとしたら少し窮屈だ。自分の仕事に引き寄せ、もっと柔軟に分かりやすさを心掛けようと戒める◆著者の石原比伊呂さんはプロフィルによれば昭和51年生まれ。当方よりも一回り若い。若い人たちがこれまでの常識にとらわれない感覚で、時代に合った新しい風を生みだしてくれるだろう。年少の師から教わると余計に、すがすがしくて快い。