連載・特集

2020.9.19みすず野

 旧坂井村の村花はハギだった。東筑北部を回っていた駆け出しの頃、駅のホームや長野道ののり面にいっぱい咲いている所があり、「ミヤギノハギ」と記事に書いたのを季節が巡るたび懐かしく思い出す◆草冠に秋。『花のことば辞典』を引くと、古くから詩歌に詠まれ、野で風に揺れたり露を置いたり。秋の哀れや寂しさを催させてきた。庭の木戸に花が散りこぼれる風情の「萩の戸」なんて季語も。たおやかな姿から花言葉は「想い」と教われば道端の赤紫色に足が止まる◆俳句に疎くても〈一家に遊女も寝たり萩と月〉なら知っている。もっとも当方の出典は「奥の細道」ではなく、金田一耕助の推理がさえる「獄門島」だが。幸田文の随筆「雨の萩」は、敷石道の突っ伏したハギを押しやって車のように回る蛇の目が印象的だ。〈花もきれい、傘もきれい、足も人もきれい!〉◆早いもので今日は彼岸の入り。めっきり涼しくなった。おぼろげな記憶をたどって坂北駅に行ってみたが、ハギの花は見えなかった。仁熊の大日堂に寄り、坂北荘の前の道沿いに連なる群がりを眺めて帰途に就く。盛りはこれから。次は岩殿山に登りたい。