連載・特集

2020.9.18みすず野

 同じ旅でもその昔は人それぞれだった。求道の旅、巡礼の旅、探検の旅、学究の旅、遊興の旅、放浪の旅、逃亡の旅。旅人ですぐ頭に浮かぶのは西行、芭蕉、当地ゆかりの菅江真澄や十返舎一九、若山牧水、山頭火...◆自らの足でひたすら歩く長い旅であり、命の保証はなく、その途次でいつ果てるとも知れない覚悟のうえで旅立ったということが、現代の旅行とは大きく異なる。それでもやむにやまれず、旅に出、何かを知り得て、何ものかを残した。往時の旅人にならって、いま修行や参詣の旅をする人もいるが、大方は仕事か観光目的の旅行◆コロナによって控えざるを得なかったものの解禁され、どこどこへ行って来ました、と話す人も。作家の高田宏さん(故人)も旅行好きだった方で、旅のエッセー集が何冊かある。『信州すみずみ紀行』(新潮社)を読むと、当地に住む者より、その歴史や習俗に詳しかったのでは、と感心する◆『ゆっくりと、旅』(岩波書店)では、「日本列島という地球上でもとびぬけて豊かな自然と文化に満ちている世界に感謝しながら」旅がしたい、と述べている。ぼちぼち、旅に出ますか。