連載・特集

2020.8.8みすず野

 「もしも小倉の空が晴れとったら、おまえらは生まれとらんかもしれんぞ」と聞かされ、小倉から約50㌔、長崎から約100㌔離れたまちで育った。午前11時2分の時刻とともに今も教師の声がよみがえる。あすは長崎忌◆長崎出身の福山雅治さんが歌う「クスノキ」は、山王神社の被爆クスノキがモチーフだ。その「子供」だろうか。長崎のクスノキが松本にも来ていると本紙の記事で初めて知った。暖地系の樹木だからうまく冬越しできず、目下養生中という。〈我が魂はこの土に根差し/決して朽ちずに/決して倒れずに〉◆久しぶりに松川村の安曇野ちひろ美術館を訪ねた。花束を手にこちらを見つめる女の子のつぶらな瞳に癒やされたり、戦火のなかで口をきつく結んだ男の子の視線に射抜かれたり。戦争を憎む理由はただ一つ、子どもの笑顔を奪うからだ。母親の怒りが伝わってくる◆その〈焔のなかの母と子〉と、いとおしむような伏し目がちの〈水仙のある母子像〉が向かい合わせに展示されていて象徴的だった。病で入退院しながら命を削り、絵筆を握り続けた。子どものあどけない表情は変わらない。きょうはちひろ忌。

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