連載・特集

2020.8.6みすず野

 その日の広島の朝は、雲一つない快晴で、真夏の太陽が早くも照りつけていた。原爆を搭載したB29エノラ・ゲイ号は、太平洋上のテニアン基地を離陸し、6時間以上かけて広島上空にやって来た。投下し、4トン軽くなったゲイ号は、空中でジャンプしたという◆昭和20(1945)年のきょうの出来事である。3日後には長崎に原爆が投下され、二つの街は一瞬にして、人も草木も建物も焼き尽くされた。ピカッ! 太陽光線の何倍もする閃光を見たと思った次の瞬間、爆風で体が7、8メートル吹き飛ばされ、幸いけがはなかったものの、地獄の光景を目の当たりにした方から、話を伺ったことがある◆「水、水をくれ、とみんな同じことを言う。でも飲ませてやると、なぜかすぐ息絶えてしまった。死体は大八車に乗せて防空壕に運んだ。物扱い。むごいもんだった」。この方は姉を頼って松本に身を寄せ、後遺症に苦しみつつ、県原水爆被災者の会会長として長年、核の恐怖、核の廃絶を訴え続け、生涯を終えた◆原爆投下から75年。生き残り、語り部となった人たちも限られてきた。コロナ感染は平和式典まで縮小を余儀なくさせている。

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