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穂高神社御船のえい行中止に

 安曇野市の穂高神社で毎年9月26、27日に開かれる例祭「御船祭」(県無形民俗文化財)で、今年はクライマックスとなる「御船のえい行」を中止することが30日までに決まった。新型コロナウイルス感染症の拡大防止のためで、記録が残る江戸時代中期以降、中止は初めてとなる。地元をはじめ県外からも多くの観光客が訪れる安曇野を代表する祭りなだけに、関係者から残念がる声が上がっている。

 御船祭は大小5台の船形の山車に、時代絵巻を思わせる穂高人形を飾り付けて境内を引き回す勇壮な祭典で、穂高区と穂高町区、等々力町区の「両町区」がそれぞれ奉納する大人船の激しいぶつかり合いが最大の見どころだ。着物を奉納した人は健康で過ごせるという信仰があり、船は色とりどりの着物で彩られる。にぎやかなおはやしの音色と威勢の良い氏子衆の掛け声、大勢の見物客で境内は熱気に包まれる。
 御船祭の記録で最も古いのは平成24(2012)年に見つかった「等々力家文書」で、元禄2(1689)年7月に松本藩に「保高御宮祭礼の船木の伐採願い」を提出したとある。祭りは少なくとも江戸以前から続いており、戦時中でも欠かさなかった。70年にわたって携わってきた穂高人形師の保尊和夫さん(93)は「終戦直後の昭和20(1945)年は、帰還した人が加わって特に盛り上がった」と振り返る。
 祭りの性格上「3密」が避けられないことから、穂高神社が6月上旬に、御船を奉納する3区にえい行中止を投げ掛けていた。下旬までに各区から中止を決定した旨の連絡があり、正式に決まった。穂高人形・御船祭り保存会の小林千尋会長は「今年の祭りはちょうど週末に当たり、遠方から訪れる人にとっても最高の条件だっただけに非常に残念」と悔しがり「来年は今年の分まで盛大にやりたい」と誓った。
 穂高神社権禰宜の等々力良勝さん(54)は「御船のえい行は中止しても祭り自体は行う。今年3月に市教育委員会が『安曇平のお船祭り調査報告書』を発行し、機運が高まっていただけにクライマックスがないのは残念だが、祭り参加者と見物客の安全を第一に考えてのこと」と理解を求めている。

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