連載・特集

2020.7.4みすず野

 「恐れ入りやの鬼子母神」で開かれる夏の風物詩「朝顔まつり」も今年は中止だそうだ。浅草寺のほおずき市も。江戸情緒を伝え、浴衣姿のそぞろ歩きが絵になる。どちらも行ったことはないけれど◆奇抜な展開の掌編で文明社会を刺したSF作家・星新一さんの「古代の神々」は、コンピューターに支配された5千年後を描く。国境も対立もない。タイムカプセルから出てきた入れ歯や眼鏡に人々は首をかしげる。指示通りの生活だと誰の歯も目も健康なのだ。紙に書かれた「平和」の概念も理解できなかった◆当地では阿禮社や深志社の舞台曳行、水無社のみこしまくり、穂高社のお船の曳行とぶつかり合い...が行われない。地域の人の心を一つにまとめ、見物客を沸かせるはずだった。祭りが5千年後も続いているかは分からないが、100年後あたりの人は記録をひもといて、2020年の中止を知るだろう◆当時は感染症を克服できていなかった、と教科書に載るかもしれない。生徒が「昔の人はどうやってウイルスを防いでいたの?」と尋ねながら、宇宙服みたいなヘルメットを脱いだりして―星さんの作品を読み過ぎたようだ。

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