連載・特集

2020.6.8みすず野

 古代インドの人生観では、生まれてから人は「学生期」「家住期」と来て、50歳から「林住期」に入る。学ぶ期間を過ぎると、家族を持ち、懸命に働いて子どもを育てる。その子らが自立した50歳からは、林の中に住んで人生を静かに生きる◆作家の五木寛之さんは、現代の日本人もそうありたいと提唱したが、晩婚化のいま、50歳の時点で末の子まで学業を終えている人はほとんどいまい。会社での自分のポジションも、坂を上る途上にあってその責任はますます重い。林住期に入れるのはやはり60歳、還暦。さらに働き続けるのが当たり前になったが、残りの健康寿命を考えると、60歳がちょうどいい◆政府が公務員の定年延長を目論見、民間に普及させようとするのは、超高齢社会で社会保障費が膨張し、支えられる側から支える側に回ってもらうのがねらい。社会全体としてはわかる。だが、人の一生としては60歳から林住期でありたい。肩の荷を下ろし、素の自分に帰って人生を味わう◆「お金が...」の声が聞こえるが、子どもが自立していればまず大丈夫。お金ではない本当の豊かさに気づいて暮らしている方、見回すといる。

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