連載・特集

2020.6.5みすず野

 「君は三無主義を知っているか?」。山あいの旧分校校舎を借り切り、夜を徹して開かれた同じ中学出身者による高校1年生歓迎コンパ。一人ずつ呼び出され、3年生たちに囲まれ、質問攻めされるなか、斜に構えた先輩から「君は―」と聴かれたのだ◆「さんむしゅぎ!? さんむ、むむ」。この間まで中学生だった少年が知る由もなく、何も答えられずにいると、先輩は「いや、いいよ」と言って、それ以上は何も聴いて来なかった。全共闘による過激な学生運動が幕を閉じ、政治や社会に関心のない若者たちが増えて、彼らの気質を示した言葉であった◆無気力、無関心、無責任の三無。これに無感動を加え「四無主義」とも言った。学生運動を繰り広げた団塊の世代とは明らかに異なる、いわゆるしらけ世代で、言われてみれば、私たちは確かにしらーっとしていた。いまや団塊の世代は70歳を超え、しらけ世代も60代、歳月は容赦なく過ぎた◆50年前の昭和45(1970)年6月、政府は日米安保条約を自動延長、沖縄返還交渉を進めるなか、安保体制を強化した。かの大阪万博が開催中で、国民の関心はもはや安保より祭典だった。

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