連載・特集

2020.6.29 みすず野

 本と共に40年近く仕事を続けてきたが、子ども時代を振り返っても絵本をまとめ読みした記憶はない。かの宮沢賢治の童話やジオノの『木を植えた男』の絵本を手にしたくらいで、親しんだ経験はない◆本を読んだ最初の記憶は、小学生のころ、親が買ってくれた世界の児童文学の何冊、学校図書館で借りた冒険物語、ルパンやホームズの探偵小説だ。それは夢中で次から次へと読んだものだが、野球のほうが好きになり、いつの間にか本は放り出していた。絵本の話に戻すと、やはり絵本は幼少期、読み聞かせられるのがきっかけになるのだろう◆スマホやテレビゲームに慣れ親しむ現代っ子にとって、絵本の持つ意味は逆に高まっているかもしれない。「ユーモア、機智、悲しみ、別れ、思いやり、つながり、支え合い、愛、心の持ち方、生き方など、人間として生きるうえで大事なもの」が絵本にはある、と述べるのは安曇野ゆかりの作家・柳田邦男さん◆洗練された文章と絵、肉声(朗読)によって、物語が立体感をもって創り出され、ゆっくり、繰り返し読むことで心に染み渡るという。大人になって読んでも遅くないようである。

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